青色申告特別控除の改正の件(複式簿記の記帳の仕方)

平成17年分の申告から、45万円・55万円の青色申告控除が廃止されて、65万円に一本化されます。 (10万円の控除は従来通りです)この65万円控除の要件としましては、「正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)」 に従って記帳していることが必要です。以下に複式簿記の原則的な記帳の仕方を掲載しましたので、 参考にして頂ければと思います。

- はじめに -

複式簿記は、企業の経営成績と財政状態を正確につかむことができる記帳システムです。 一般に複式簿記は大変難しく、なかなか理解しにくいものと誤解されているようですが、 家計と事業がきちんと分離されていれば、容易に記帳できるようになるかと思います。 ここでは初めて複式簿記を行なう方向けに、実務的な日常の記帳に重点をおいてまとめてみました。 企業経営の合理化と健全化のために、また青色申告特別控除65万円の適用を受けるために 是非複式簿記にチャレンジして下さい

1.簡易簿記と複式簿記のちがい

簡易簿記

損益計算書が作成できる程度に、収入と経費を中心とした資産と負債の増減を記録します。 つまり、現金・売掛金・買掛金・経費・固定資産の増減を帳簿に記録し、それ以外の資産 (預金・受取手形・貸付金など)・負債(支払手形・借入金・未払金など)の記録は省略しています。 記録は一つの取引について現金出納帳や売掛帳などの一つの帳簿に記入する場合と、 現金出納帳と経費帳のように二つの帳簿に記入する場合があります。

複式簿記

事業上のすべての資産・負債・資本の増減を記録します。記録はすべての取引について必ず 二つ以上の帳簿(二つ以上の勘定科目)に記入します。こうすれば容易に損益計算書と貸借対照表が 作成でき・企業経営の状態が正確に把握できます。

2.記帳開始の仕方

複式簿記の要件として、①仕訳が行われている(振替伝票の記入、又は仕訳帳の記帳)事と、 ②総勘定元帳の記帳がされている事があります。・・・と言いましても難しいことはありません。 まず元帳用紙を用意して、ご自分で必要な各勘定(現金・預金・売掛金・買掛金・借入金など) の※開始の残高(1月1日現在それぞれの金額がいくらあるかを指します)を確認し、 用紙の残高欄に記帳します。当年分の記帳は、その数字に加算・減産を行っていきます。 また、各種の経費(消耗品・交通費・交際費…等々)については、開始残高はありませんので 1科目1ページ用紙の用意をします。

元帳用紙現金記入例(現金)

 年
月日
摘 要 借 方 貸 方 残 高
1 4 前年より繰越 4,9851

※主な残高の把握の仕方

(ア)現金残高は、自宅(事業所)に置いておく事業用の現金(・・)のことです。 預金等の残高ではありません。生活費と区分して事業用に実際に用意した金額を残高とします。 もし決めにくい場合は、5万ないし10万円位で開始してみて下さい。

(イ)預金残高は通帳の1月1日現在の、普通預金・定期預金等の預金残高を確認して記帳します。 (預金が二つ以上ある場合はそれぞれの口座に対して補助簿を作成します) 又、いくつも口座がありますと記帳に手間がかかりますので、事業に関連する預金はなるべく 少なく(可能であれば一つに)した方が良いでしょう。

(ウ)売掛金残高は1月1日現在で納品はしているが、まだ入金にならない金額の事です。 例えば月末〆で翌月10日払いの契約の場合には、1日現在ではまだ入金していませんので、 その1ヶ月分の納品金額が「売掛残高」になります。買掛はこの逆に、1日現在でまだ支払って いない金額が「買掛残高」です。

ワンポイントレッスン

元帳用紙に「借方」・「貸方」と書いてありますが、これには特に「借りる」とか「貸す」 とかの意味はありません。単に左の記入欄を「借方」、右の記入欄を「貸方」と覚えてください。

3.記帳の仕方

なぜ仕訳が必要?

2.で「複式簿記は、必ず二つの帳簿に記帳します」と書きましたが、それは取引には二面性があるためです。 例えば、例えばボールペンを100円で買い、現金で支払ったとします。 この場合、①「 現金」が財布から減少した事と、②「消耗品」という経費が発生した事の 二つの動きが生まれます。複式簿記では、これをありのままに記帳しなければなりません。 そこで、この動きを勘定科目ごとに帳簿の左(借方)、と右(貸方)に分けて記入します。 これを「仕訳」と言います。

「借方」「貸方」のルール

① 仕訳をする際に、科目ごとに「資産」「負債」「費用」「収益」の各グループに分けて考えます。

資産グループ :  現金・預金・建物・車両・売掛金・受取手形など
負債グループ:   買掛金・借入金・支払手形・未払金・預り金など
費用グループ :  消耗品費・旅費交通費・支払利息・水道光熱費など
収益グループ :  売上・収入・雑収入など

②下記の仕訳のパターンのどれに当てはまるかによって、借方の科目か、貸方の科目かを決定します。

仕訳のパターンと記入例

ワンポイントレッスン

仕訳に慣れないうちは、借方・貸方の右か左がアレ?と判らなくなる事があります。 そんな時は、「ちゃっかり」と覚えましょう。皆さんも子供のころにお茶わんを持つ手が 左と教わったことはないでしょうか? そうです、茶わんを持つ手がの方が借方(左)なので「ちゃっかり」です。いかがですか・・・

4.実際の記帳

今回は、実際の記帳の手順です。例題は「1月5日、ボールペンを現金100円で購入」の場合とします。

手順Ⅰ 仕訳の検討

まず一方の科目はボールペンを買ったという「消耗品費」ですので、前回の科目のグループ分けとしては 「費用グループ」になります。「費用グループ」は借方(左側)に記入(前回「仕訳のパターン」 ⑤を参照)しますので「消耗品費」の科目を借方(左側)に記入する事が決まります。次にもう一方 (相手勘定と言います)には、現金での購入ですので「現金」という科目が記入されることになります。 (現金は「資産グループ」ですので、前回「仕訳のパターン」①を参照)。

手順Ⅱ 仕訳の記帳

仕訳の記帳は以下の仕訳帳簿、又は振替伝票に行います。

【元帳】(消耗品費)

○年
月日
摘 要
借 方 貸 方 残 高
1 5 ボールペン購入 100 100

【現金出納帳】

○年
月日
科 目 摘 要 収入金額 支払金額 差引残高
1 1 前年より繰越 159,600
5 消耗品費 ボールペン購入 100 159,500

以上のように日々の記帳の際は必ず、仕訳(仕訳帳簿の記入)⇒元帳への転記を行ってください。
(注)差引残高は、その勘定一日分の取引の記帳が終わったときに計算し、記入します。

ワンポイントレッスン

①仕訳を考える時に例えば上記の場合、科目は「現金」と「消耗品費」のふたつです。 「消耗品費」が「借方」と決まれば、反対側の記入は当然「現金」しか残っていませんので、 自動的に「現金」に決まります。解りにくい仕訳の時は、まず自分の解りやすい片方の科目を考えれば、 残りはその反対側に埋めれば良いことになりますので、仕訳発想の際の参考にして下さい。 (通常は現金を中心に発想していきます)

② 事業に関係の無い動きにつきましては、「事業主勘定」を使います。入金は「事業主借」出金は 「事業主貸」になります。例えば事業主のポケットマネーを事業用に繰り入れた場合は「事業主借」 で入金処理(摘要は「事業主より」「奥より」など)、生活費を取った(使った)場合は「事業主貸」 で出金処理(摘要は「生活費」、または口座からの住民税の引落し等は、具体的に「住民税○期分」など)します。

5.売掛金と買掛金

ここでは簿記の中でも身近で、しかも重要な事項の「売掛金」と「買掛金」の記帳についてです。 早速ですが、簡単に言いますと「品物を販売して、後でお金をもらう(通常は翌月)」ことが売掛(売掛金)であり、 逆に「品物を仕入れて、後でお金を支払う」ことが買掛(買掛金)になります。

この事がなぜ重要かと申しますと、確定申告を行う上で、売上・仕入の計上時期をいつの時点に するかの決まりがあり、それは「売れた品物を納品した時点で売上を計上し、又、仕入れた品物が 納品された時点で仕入を計上する」ことになっています。つまり、お金をまだもらっていなくても、 支払っていなくても売上・仕入を計上しなくてはいけないと言うことになります。

例えば12月31日に売上が10万円、仕入が8万円あったとして、共に翌年1月25日に10万円が入金し、 支払を8万円行う予定とした時に、まだ本年はお金の動きが無いので翌年の処理としてしまいますと、 売上・仕入の計上もれになってしまいます。特に売上の計上もれの場合、後で多額の修正税額が 出てしまう事もありますので十分に注意が必要です。

※この例の仕訳は以下の様になります。

①本年分の処理で売上・仕入を計上します。
16年12/31  (売掛金)100,000円(売 上)100,000円
 〃   〃    (仕 入) 80,000円(買掛金) 80,000円

②翌年の入金、支払時は売掛金・買掛金として処理します。
17年  1/25 (現 金)100,000円(売掛金)100,000円
 〃     〃  (買掛金) 80,000円(現 金) 80,000円

ワンポイントレッスン

 「買掛金」は仕入を後払いする時に使いますが、仕入以外の経費の場合には「未払金」を使います。
(例)事務所用のエアコンを購入、代金は翌月25日に支払う事とした。
仕訳・・(備品費)98,000円/(未払金)98,000円

6.その他

ここまで複式簿記による毎日の記帳の仕方を勉強してきましたが、簿記の最終目的は決算書の作成です。 今回は決算書作成のために必要な項目の確認をしてみたいと思います。

① 売上(収入)・仕入金額
売上・仕入の金額は、1月から12月までの各月の合計金額と、1年間の合計金額が必要です。 その際に、売上・仕入に計上するのは「請求した月・納品のあった月」の金額になります。 入金日や支払い日で計上しないように注意しましょう。また、特に12月分は、〆後31日までの 売上・仕入の計上もれ(例えば、20日〆後から年末までの納品分も売上に計上が必要です)にも気をつけましょう。

② 棚卸金額
正確な決算の為には、正確な棚卸が欠かせません。年末・年始ゆっくりしたいところですが、 仕事始めの前までに時間を作って行なってみて下さい。

③ 各経費
イ) 経費については、決算のための月毎の集計は不要です。1年間の合計金額を算出します。 集計する際、独自の科目を沢山作っている方は決算書の印刷科目を参考にし、なるべくその科目 に当てはめて合計をして下さい。(例、 水道代・電気代・ガス代・灯油代 ⇒水道光熱費へ) 頻繁に使用する金額の大きい科目は、そのまま決算科目として残します。

ロ) 修繕費・備品費・車両関係費等の科目の中で、一度に10万円以上の支出については 「減価償却」に該当するものがある場合がありますので、チェックしておいて申告の際に 青色申告会又は税務署等に確認して下さい。

ハ) 租税公課に住民税・所得税等が混入していないか、家事費に該当するものの按分等 (光熱費・ガソリン代の家事使用分の差し引き)にも注意しましょう。

④ 貸借対照表
日頃複式による記帳をされていても、期末(12月31日)の必要な数字が確認出来ないと 貸借対照表は作れません。以下の数字は特に必ずチェックして下さい。

⇒ 現金・預金・売掛金・棚卸合計・買掛金・借入金(返済表等で確認)等

以上決算書のお話をしてみました。色々な確認事項があって大変ですが慣れれば 毎年の繰り返しですのでどうか頑張ってみてください。
さて初めて簿記の勉強をされる方向けに簿記入門的なお話をさせて頂きましたが、 少しはお役に立ったでしょうか?一応ここまででこの講座は終了させていただきますが、 複式簿記の基本は「仕訳→二箇所に転記」です。お疲れでも毎日の記帳をお忘れなく・・・

ワンポイントレッスン

上記④の各種残高は、同額を翌年に繰り越して記帳を開始します。 例・・・現金残高が99,550円であれば翌年期首に同額を残高欄に記入し、その額から記帳を開始します。

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